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メアリー・エインズワースコレクションでレアな浮世絵を鑑賞!

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大阪市立美術館玄関
大阪市立美術館で浮世絵展が開催中。米国人女性の個人コレクションからの出展ですが、黎明期から幕末までの浮世絵の歴史をたどるうえで貴重なものとなっています。

また、摺や版の違う同一作品を見比べられる展示や、世界唯一のレアな作品などもありました。今回は、メアリー・エインズワース浮世絵コレクション展の内容と感想などのレポートです。

メアリー・エインズワース浮世絵コレクションとは?

浮世絵コレクション展示入り口

初めての里帰り公開となったエインズワースコレクション展

浮世絵コレクションの有名ドコロといえば、ボストン美術館やシカゴ美術館などが挙げられますが、実は穴場がありました。

大阪市立美術館で開催中の『メアリー・エインズワース浮世絵コレクション -初期浮世絵から北斎・広重まで』は、オハイオ州オーバリン大学のアレン・メモリアル美術館からの出展です。

アレン・メモリアル美術館には、アメリカ人女性メアリー・エインズワースが寄贈した1,500点以上の浮世絵が所蔵されているのですが、その中から選りすぐった200点が、今回初の里帰り公開されることとなりました。

メアリー・エインズワースって誰?

メアリー・エインズワースは、明治39年(1900年)の来日をきっかけに浮世絵のコレクションを始めた米国人女性です。

彼女の渋いところは錦絵ではなく、どちらかといえば地味に見える初期の浮世絵からコレクションをスタートした点でしょう。

来日して最初に購入した石川豊信の「提灯と傘を持つ佐野川市松」をはじめ、世界に1点ずつしかない鈴木春信の細版紅摺絵の役者絵など、これまで見る機会がなかった初期浮世絵など約90点の貴重な作品がコレクションされています。

その後、彼女は浮世絵の黎明期から幕末までを網羅した、学問的にも価値の高いコレクションを完成させました。

なお、1938年に出された浮世絵コレクターの番付『古今東西浮世絵数寄者総番付』の「外人数寄者いろは番付」 内にもメアリー・エインズワースの名前がみられます。

浮世絵で美人の変遷をたどってみよう

浮世絵における美人は、鈴木春信が描く華奢で可憐な女子がスタートでした。その後、鳥居清長のスラリとした八頭身美人と続きますが、美人の表情をアップでとらえた喜多川歌麿の大首絵は圧巻です。

「当時遊君生写 松葉屋 染之助」では、髷の透け具合の美しさに、浮世絵の黄金期を支えた摺りや彫りの高い技術力もうかがえます。

歌川国政の「岩井粂三郎の禿たより」は、目ヂカラがすごい!愛嬌と色気を併せ持つ役者の魅力が半端ではなく、芝居好きが高じて絵師になったという国政の面目躍如といえる作品でしょう。

葛飾北斎の風景画も充実

冨嶽三十六景 山下白雨 画像引用元: Katsushika Hokusai | Storm below Mount Fuji (Sanka no haku u), from the series Thirty-six Views of Mount Fuji (Fugaku sanjūrokkei) | Japan | Edo period (1615–1868) | The Met

人物画からスタートした浮世絵での風景は、人物のバックにあしらわれる程度の扱いでした。

ところが北斎の「冨嶽三十六景」シリーズの大ヒットで、風景を主役とした浮世絵が市民権を得るようになったのです。

本展では、赤富士を含むシリーズ11点のほか日本各地の風景を写した作品や、和歌・漢詩に題材を得た風景画なども数多く展示されています。

あわせて歌川国芳の「東都シリーズ」なども出展されており、国芳ならではの斬新な構図と西洋画の表現を取り込んだユニークな風景画を鑑賞できます。

メアリー・エインズワースは広重が大好き

東海道五十三次・庄野 白雨 画像引用元: Utagawa Hiroshige | Sudden Shower at Shōno, from the series Fifty-three Stations of the Tōkaidō | Japan | Edo period (1615–1868) | The Met

失われていく江戸の風景を求めて

明治維新以降、日本は西洋化の道をひた走っていましたが、メアリー・エインズワースが初来日した明治39年(1900年)頃は、町や庶民の暮らしにまだまだ江戸時代の面影が残っていました。

西洋の波をかぶる前の日本にひかれたメアリー・エインズワースにとって、江戸期の香りが漂う歌川広重の風景画はとても魅力的に映ったでしょう。

メアリー・エインズワースが浮世絵の収集を始めたころは、まだ広重没後50年ほど。作品の入手も比較的行いやすかったようで、約1,500点のコレクションのうち、800点ほどが広重の作品で占められています。

旅をしたくなる広重の「東海道五拾三次」シリーズ

北斎が「冨嶽三十六景」シリーズを発表してからしばらくして、広重は東海道を旅した際のスケッチを元にしたとされる、「東海道五拾三次」を世に出しました。

宿駅の情景や道中の風景風物、道行く旅人のようすなど臨場感あふれる風景画は、折からの旅行ブームと相まって大人気となったようです。

広重の風景画は、見たままをリアルに描いたものかどうか疑問視する声もあります。

確かに全てを取材した上でリアルに描いたとは言い難いようですが、当時とは地形が大きく変わってしまった場所もあるようです。

ちなみに土木の専門家である竹村公太郎氏は、「東海道五拾三次」を資料としてしばしば参照しておられます。

摺や版違いも楽しめる贅沢な展示

メアリー・エインズワース浮世絵コレクションでは、版や刷りを違えて作成された広重の作品を見比べることができるのです。

たとえば「東海道五拾三次之内 日本橋 朝之景」では、初摺と雲の版を省いた後摺に加えて、異版の「東海道五拾三次之内 日本橋 行烈振出」の3点が展示されています。

他にも「名所江戸百景」の「大はしあたけの夕立」と「両国花火」も摺や版違いの2点が並んでいて、じっくりと見比べながら表現の違いを楽しめます。

ちなみに筆者は、歌川広重ではなく「安藤広重」のほうがしっくりくるのですが、昭和50年半ば頃までは「安藤広重」のほうが一派的だったそうです。歌川派か安藤派かで、年齢当てゲームができそうですね。

メアリー・エインズワース浮世絵コレクション展の詳細

大阪市立美術館外観

メアリー・エインズワース浮世絵コレクション展

オーバリン大学アレン・メモリアル美術館所蔵
メアリー・エインズワース浮世絵コレクション -初期浮世絵から北斎・広重まで

  • 会期:2019年8月10日(土)~9月29日(日)
  • 会場:大阪市立美術館(大阪市天王寺区茶臼山町1-82)
  • 時間:午前9時30分〜午後5時(入館は午後4時30分まで)
  • 休館日:月曜日(祝休日は開館・翌火曜日休館)
  • 料金:
    一般 1,400円・高大生1,000円※中学生以下、障がい者手帳のある方(介護者1名を含む)は無料(要証明)

▼ぐるっとパスがあれば大人1名が1,200円に

大阪市立美術館へのアクセス

美術館は天王寺公園内にあります。天王寺駅を出たら「てんしば」を通って遊歩道を進み、旧黒田藩屋敷長屋門(黒田門)をくぐるルートがわかりやすいでしょう。天王寺駅からの出口は以下のようになっており、下車後北西へ徒歩約400mです。

  • 大阪メトロ 御堂筋線・谷町線:15・16号出口 ※16号出口突きあたりにエレベーターあり
  • JR:中央口改札

メアリー・エインズワース浮世絵コレクション展の相互割引

大阪歴史博物館にて9/8(日)まで開催の「浮世絵ねこの世界展」の観覧券の半券を大阪市立美術館で提示すると、特別展「メアリー・エインズワース 浮世絵コレクション」の当日券が100円引きされます。

あるいは「メアリー・エインズワース 浮世絵コレクション」の観覧券か半券の提示で、「浮世絵ねこの世界展」鑑賞料が団体割引料金になります。

江戸時代の華・浮世絵に見る在りし日の日本

江戸期の世相を映す浮世絵が一同に

メアリー・エインズワース女史の名前はあまり知られていないためでしょうか、訪れた日が土曜日だったにもかかわらず、会場はゆったりとしていました。

「メアリー・エインズワース浮世絵コレクション」は、浮世絵の黎明期から幕末までの作品を一同に鑑賞できる貴重な機会ですので、ぜひ時間を作って鑑賞していただきたいと思います。

今日のボタモチ

今日のボタモチは【探求】です。

安倍首相は「日本を、取り戻す」と言っていましたが、取り戻すべき日本のありようはどのようなものなのでしょうか。筆者は、浮世絵の中から見つけられるのではと思っています。

※今日はボタモチ、1個追加!

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アラ50のO型
現在、昼間は介護予防事業、アフター5はエイジレスライフ実現への考察と実験に勤しむ日々です。
介護予防につながるエイジレスライフの奥義は、好奇心を失わないこと。その実践として「興味本位」な毎日を過ごしています。おいしそうなボタモチはとにかく食べてみよう!ということで、新たな世界との出会いに加え、足腰が強くなるというおまけも付いてきました。
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