「ウィーン・モダン クリムト、シーレ 世紀末への道」展が大阪の国立国際美術館で開催中です。高校のころ、教科書に載っていたクリムトの作品を見て衝撃を受けた筆者、ぜひ実物をと思い大阪へ出かけました。
今回は、大阪のクリムト展の見どころと感想のほか、国立国際美術館へのアクセスやグッズ・ランチ情報についてです。
大阪のクリムト展でクリムトの作品は18点
見どころはクリムトの女神「エミーリエ」の肖像
大阪での「ウィーン・モダン クリムト、シーレ 世紀末への道」展には全部で330点が展示されていますが、そのなかでクリムトの作品は18点。さみしい…東京の国立新美術館では50点近くあったのに。
とはいえ目玉展示の「エミーリエ・フレーゲの肖像」は、インパクト大でした。178×80cmの大きな画面に描かれたエミーリエはモダンなドレスをまとっていますが、女神のような神々しさが感じられます。
「エミーリエ・フレーゲの肖像」は写真撮影もOKで、絵の前に置かれた椅子に腰かけてじっくり鑑賞できるようになっていました。
「パラス・アテナ」に託したクリムトの決意
「パラス・アテナ」は、クリムトが新しい芸術を理解しない保守派から決別して「ウィーン分離派」を立ち上げたときに描かれた作品です。
「ヌーダ・ヴェリタス(裸の真実)」の化身を手に持ち、アイギスの胸元にはメデューサの首が描かれています。このメデューサの首は舌を出して人を喰ったような表情をしていますが、わからずやの保守派たちをからかっているのでしょうか。
ところで「パラス・アテナ」の兜ですが、アニメ「海のトリトン」でヘプタポーダがかぶっていたものとよく似ています。キャラクターのデザインを担当した方は、「パラス・アテナ」を見たに違いないのでは?
初期作品のほか素描画やグラフィックも
クリムトといえば黄金に輝く女性像が思い浮かびますが、初期のころは超正統派の画風でした。
ウィーン工芸美術学校にトップクラスの成績で入学し、アカデミックな古典絵画教育を受けたクリムトが21歳のころに描いた「寓話」や、その5年後の「旧ブルク劇場の観客席」をみると、卓越した画力がうかがえます。
ほかにもこれまで見る機会がなかった素描画や、モダンなグラフィックが展示されています。
大阪のクリムト展の詳細とアクセス
大阪「ウィーン・モダン クリムト、シーレ 世紀末への道」の詳細
- 住所
大阪市北区中之島4-2-55 - 会期
2019年8月27日(火)~ 12月8日(日)10:00~17:00
※金曜・土曜の開館は9月が21:00まで、10~12月は20:00まで - 休館日
月曜日 ※9/16・23、10/14、11/4は開館し翌日休館 - 観覧料
一般1,600円・大学生1,200円・高校生800円
※9月中の日曜・祝日は高校生無料(要証明)
※中学生以下無料(要証明)・心身に障がいのある方とその付添者1名無料(要証明)
▼ぐるっとパスなら大人1,400円
国立国際美術館へのアクセス
- 京阪中之島線「渡辺橋駅」2番出口より南西へ徒歩約5分
- 大阪メトロ四つ橋線「肥後橋駅」3番出口より西へ徒歩約10分
- JR大阪環状線「福島駅」/東西線「新福島駅」2番出口より南へ徒歩約10分
- 阪神「福島駅」3番出口より南へ徒歩約10分
- 京阪・大阪メトロ御堂筋線「淀屋橋駅」7番出口より西へ徒歩約15分
国立国際美術館は駅から少し離れているため、できるだけ歩きたくない方はバスがおすすめです。
- 大阪シティバス
JR大阪駅前より53号・75号系統で「田蓑橋」下車、南西へ徒歩約3分
帰りのJR大阪駅方面最寄バス停は「渡辺橋」になります。 - 中之島ループバス「ふらら」(平日のみ)
淀屋橋駅4番出口から西へ100m「淀屋橋」より「市立科学館・国立国際美術館前」下車すぐ
オリジナルグッズは充実のラインナップ
オリジナルグッズは特設ショップいっぱいに並んでいて、どれにするか悩んでしまうほどです。
定番のポストカード・クリアファイル・バッグなどのほか、作品のレプリカや「エミーリエ」のドレスと同じ模様のストールとマイメロディのぬいぐるみもありました。
また、アクセサリーやワイン、お菓子などもありかなりの充実度。筆者はさんざん悩んだ末、手ぬぐいとマグカップにしました。
レストランではコラボランチも
国立国際美術館に併設レストラン「中之島ミューズ」では、「ウィーン・モダン クリムト、シーレ 世紀末への道」展に合わせて期間限定で「ポークのトマトグーラッシュランチ」が提供されています。
オーストリア定番の煮込み料理「ポークのトマトグーラッシュ」にサラダ・スープ・ライスorパン+ウィンナー風コーヒーゼリーとドリンクがついて1,380円(税込)です。
なお、「ぐるっとパス」があれば5%引きになります。
愛と官能を描いたクリムト
クリムトとの衝撃の出会い
筆者とクリムトとの出会いは、美術の教科書に載っていた「ダナエ」でした。
「ダナエ」をモチーフにした作品の多くは、ダナエの股間に黄金の雨が注がれるという意味深な構図で、天使など神話っぽいものがあしらわれています。
一方、クリムトの「ダナエ」にもお約束の黄金の雨が描かれていますが、神話っぽいものは登場しません。
正方形に近い画面いっぱいに描かれたダナエのうっとりした表情に、神話をここまで官能的に描いてよいのかと、衝撃を受けたことを覚えています。
なにかとお騒がせな問題作が多いクリムト
「愛と官能の画家」と呼ばれるクリムトの作品には、官能的なものが多くみられます。
ウィーン大学から依頼を受けた、大講堂の3枚の天井画「法学」「医学」「哲学」が、「大学にふさわしくない」とダメ出しされてしまうのです。
裸婦ばかり描いているように思われる西洋画の世界ですが、それでもクリムトの作品は「公序良俗」に反するとみられたのですね。
この一件でクリムトは保守派に反発する若手芸術家たちとともにクンストラー・ハウスを脱退し、新しく「ウィーン分離派」を形成しました。
ところが第一回ウィーン分離派展のポスターも検閲に引っ掛かり、男性の体の一部を隠すようにデザインを変更することになるのです。
モテモテだったクリムト
クリムトは猫好きなAGAおじさんにしかみえませんが、実はモテモテで婚外子もたくさんいました。
若いモデルがいっぱいのアトリエはハーレム状態で、ブルジョア夫人からの肖像画の依頼も多く、クリムトの周りにはいつも女性がいたのです。
にもかかわらずクリムトは生涯独身を通し、ただひとりの「女神」ともいうべき女性「エミーリエ」とは、プラトニックな関係だったそうです。
世紀末ウィーンの煌めきを今に
滅びゆく帝都の栄光を俯瞰
19世紀末から20世紀初頭にかけて、ウィーンでは「世紀末芸術」が煌びやかに花開きました。
1914年にオーストリアから第一次世界大戦がはじまり、1918年に降伏してハプスブルク帝国は終焉するのですが、この年にクリムトもシーレも冥界に旅立ちます。
落日のときに最高の輝きを放つ夕日のような、世紀末ウィーンの芸術を俯瞰できる展示でした。
今日のボタモチ
今日のボタモチは【痛恨】です。
3枚の天井画「法学」「医学」「哲学」は、紆余曲折を経てインメンドルフ城に移されますが、ナチスによって焼失させられました。見たかった…全く痛恨の極みですが、モノクロ写真が残っただけでもラッキーだったと思うことにしましょう。
※今日はボタモチ、1個追加!
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