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文楽と人形浄瑠璃の違いは?大阪と淡路で両方見た感想を紹介

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京都のギオンコーナーで、未知の世界だった文楽のサワリを見て、ぜひ通して見てみたくなった筆者。鑑賞できる場所を探していて見つけたのが、大阪の国立文楽劇場と淡路の淡路人形座でした。

今回は、大阪の文楽と淡路の人形浄瑠璃を実際に見比べてのレポートです。

文楽と人形浄瑠璃の違いはどこにある?

文楽は人形浄瑠璃のひとつ

文楽と人形浄瑠璃は、ともに三味線と太夫による浄瑠璃(義太夫節)に合わせて、一体の人形を三人の人形遣いが操りながら物語を演じるというものです。

文楽のはじまりは、17世紀後半に大阪で竹本義太夫が始めた「義太夫節」で、近松門左衛門を座付作者に迎えて大人気となります。その後いったん衰退しますが、19世紀に入って淡路島出身の興行師・植村文楽軒が「文楽座」を興して人気が再燃しました。

そのため「文楽」が「人形浄瑠璃」の代名詞となって現在に至っているのです。ちなみに床本(ゆかほん)と呼ばれる台本は、文楽・淡路の人形浄瑠璃とも同じものを使っています。

最大の違いは主遣いの出で立ち?

文楽は人形浄瑠璃のひとつですが、全く同じものではありません。一番大きな違いは、三人の人形遣いのうちのひとり、「主遣い」といわれる人が顔出しで出演(出遣い)しているかどうかということだと思います。

文楽の主遣いは顔出し・紋付き姿で演じることが多く、淡路人形座の人形浄瑠璃では三人共黒子姿で演じることが多いようです。ちなみに、文楽劇場で鑑賞した「新版歌祭文」で久作を遣っていた方は、ギオンコーナーでお七を遣っていた方でした。

▼八百屋お七 火の見櫓の段

使われる人形にも違いがあり、文楽で使われる人形の首(かしら)は4寸と、淡路人形座の6寸に比べて小さめになっています。人形の操作方法も違っていて、文楽では胴串と呼ばれる首を支えるための握り棒を手のひらで受けて、垂直に構えます。

一方淡路では、主遣いが左手で人形の心串を握る鉄砲ざしで操作します。おそらく首の大きさが操作方法の違いにつながっているのでしょう。この違いが、文楽の繊細さと淡路人形座の力強さとして現れているのです。

得意な演目も違う

文楽が得意とする演目は「世話物」「景事(けいごと)」です。世話物は「曽根崎心中」のような江戸時代の町人世界を描いた演目、景事は能や狂言などを題材にした舞踊劇です。

一方、淡路人形座の人形浄瑠璃では「時代物」「神事舞」がよく演じられます。時代物は「賎ケ嶽七本槍」のような江戸時代より以前の物語で、神事舞は「式三番叟」「戎舞」などです。

もともと戎様に奉納する神事として、約500年前に始まったのが淡路人形浄瑠璃なので、現在も神事舞が盛んに上演されています。

文楽を演じているのは男性のみ

文楽で出演しているのは男性のみですが、淡路人形座の人形浄瑠璃では、女性も出演しています。筆者が淡路で鑑賞した「傾城阿波の鳴門 巡礼歌の段」でも女性が出演していました。

芸風にも違いがある

江戸時代の文化先進地である上方で育まれた文楽には、やはり洗練された都会的な雰囲気が漂っています。

一方、戎様への奉納神事として始まり、地域に根ざしていった淡路の人形浄瑠璃は観客との距離が近く、狐七化けや大道具返しに見られるようなエンタメ性の強さが特色です。

文楽・人形浄瑠璃の両方を見た感想

文楽・人形浄瑠璃と歌舞伎は似ている

文楽を含む人形浄瑠璃と歌舞伎は、江戸時代の庶民に愛された二大娯楽として、お互いに影響し合い発展しました。そのため、どちらかで当たった作品はもう一方でも上演されることが多くなり、人形浄瑠璃の台本と歌舞伎の台本は、結構クロスオーバーしています。

人形浄瑠璃を歌舞伎化したものは「丸本狂言」「義太夫狂言」と呼ばれ、「仮名手本忠臣蔵」「義経千本桜」などは現在も人気が高い作品です。つまり、人形浄瑠璃と歌舞伎では話の筋は同じようなものが多く、今風に言えば、アニメと実写の両方で同じ原作を作品化しているようなものです。

また「日本のシェイクスピア」といわれる近松門左衛門は、歌舞伎の台本も書いているので、ますます両者の垣根は低くなっているようです。

一人で語る太夫が凄い

人形浄瑠璃では、基本的にストーリーと登場人物すべての台詞を太夫が一人で語ります。いかつい男も麗しい姫も、老婆も子供も、声色や口調を変えて語り分けるのです。

淡路人形座では、20代半ばの女性太夫がひとりで45分間熱演していました。上演時間が長い国立文楽劇場では、「新版歌祭文」で三味線と太夫が3回交代、「日本振袖始」では人形ごとに太夫が分担し、三味線が5棹プラス胡弓のデラックス版でした。

語っている言葉は昔風の大阪弁で、現在の関西弁を聞いて理解できる方なら、「何を言っているのか、ぜんぜんわからない」ということはないでしょう。

文楽劇場では舞台上方に字幕が表示されるし、イヤホンガイドを借りれば音声案内もしてくれるので、予習しておかなくても大丈夫です。イヤホンガイドはレンタル料650円+保証金1,000円(返却すると返してくれる)で借りられます。

人形は人間よりも人間っぽい

文楽や人形浄瑠璃に登場する人形の、衣装のなかはほぼがらんどうです。けれども舞台での動きは情感がにじみ出ていて、人間より人間っぽさが感じられます。

▼衣装の中身はこんな感じ

特に女性が想いを訴える「クドキ」の場面はなんとも色っぽく、見どころのひとつでしょう。けれども不思議といやらしさは感じられないので、お子さんと一緒でも落ち着いて鑑賞できますよ。

文楽・人形浄瑠璃は意外と敷居が低い

文楽・人形浄瑠璃は難しくない

伝統ある古典芸能である文楽や人形浄瑠璃は、なんだか難しいもののように感じていました。ところがめまぐるしく場面が変わったり、展開が交錯したりでわかりにくい最近のドラマより、文楽や人形浄瑠璃のほうが直感的に理解できるものだったのです。

国立文楽劇場では8月7日まで夏休み特別公演が続き、その後は11月と新春に公演があります。淡路人形座ではほぼ毎日上演しているので、福良方面へお出掛けならぜひ一度足を運んでみてください。

▼国立文楽劇場で良い座席はどこ?

▼淡路人形座で人形浄瑠璃を観よう!

今日のボタモチ

今日のボタモチは【食わず嫌い】です。

人生も半ばを過ぎると、保守的になりがちです。けれども食わず嫌いで世間を狭めることは、脳に悪いのです。食わず嫌いを改め、何でも食べる良い子になったほうがトクかも?

※今日はボタモチ、2個追加!

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プロフィール

若杉ひふみ
兵庫県生まれの兵庫県育ち
アラ50のO型
現在、昼間は介護予防事業、アフター5はエイジレスライフ実現への考察と実験に勤しむ日々です。
介護予防につながるエイジレスライフの奥義は、好奇心を失わないこと。その実践として「興味本位」な毎日を過ごしています。おいしそうなボタモチはとにかく食べてみよう!ということで、新たな世界との出会いに加え、足腰が強くなるというおまけも付いてきました。
そんなボタモチたちを集めたのがこのブログです。稔り多い人生を祝う「祝活」を目指す日々が、ボタモチとなって棚の上に積み上がり、いつかナイスなタイミングで落ちてくるかも?

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