文楽は難しい?初心者向きの演目やチケットのお得な予約方法はある?

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最近、日本の伝統芸能に対する興味を持つ方が増えていていますが、なんとなく敷居が高いように感じられるという声も聞かれます。

そこでこの夏文楽デビューしたばかりの筆者が、これから文楽を観てみたいと考えている方に向けて、文楽のガイドをさせていただきます。11月公演が始まっている国立文楽劇場の第二部(夜の部)に出掛けた感想も、軽くお届けしましょう。

文楽は初心者には難しい?

文楽はもともと庶民の娯楽

文楽は決して難しいものではありません。伝統芸能の演劇部門として文楽・歌舞伎・能の3つが挙げられますが、もともとはいずれも大衆芸能として発生したものです。

このうち能は、徐々に武家のものとなりました。一方、文楽と歌舞伎は庶民の楽しみとして発展し、江戸時代の歌舞伎役者は今でいうアイドルのような存在だったのです。

その後、明治に入り歌舞伎は政府高官や外国要人に向けて高級化され、庶民の手から少し離れてしまいました。けれども、文楽はずっと庶民とともにあり続けてきたので、誰もが気軽に楽しめるものなのです。

内容は意外と今風

文楽で演じられるお話の時代設定は江戸期やそれ以前のもので、登場する人形も着物を着て髷を結った出で立ちです。時代背景への理解があった方が分かりやすいことは確かですが、内容は意外と今風のものが多くあって、それもワイドショーのネタにでもなりそうな…。

ちなみに11月公演第二部の演目は、継母が夫の連れ子を虐待の末あわや殺害か?というお話と、ニート息子が家庭内暴力の挙げ句に殺人事件を起こすというお話です。

語りは関西弁

文楽では原則、登場人物すべてのセリフとナレーションを、一人の太夫(語り手のような存在)が謡うように語ります。いってみればミュージカルに近い雰囲気でしょうか。

語られる言葉は少し昔の関西弁といった感じで、謳うといっても能のように長く引っ張りはしないので、十分に聞き取れるはずです。国立文楽劇場では舞台の上方に字幕が出るし、不安ならイヤホンガイドを借りることもできます。

文楽は敷居が低い

もともとは庶民の楽しみだった歌舞伎ですが、チケットの価格は1~2万円します。一方文楽は4~6千円で観ることができ、お値段的にも敷居の低いものとなっています

ドレスコードなども特になく、夏公演で隣に座っていた外国人観光客は、タンクトップに半ズボンというラフな服装で鑑賞していました。

文楽で初心者向きの演目は?

2大演目は「時代物」と「世話物」

文楽の演目は大きく分けると「時代物」と「世話物」の2つです。

「時代物」は公家や武家社会に起こった事件や物語がテーマとなっており、時代背景は江戸期以前の平安から戦国時代にかけてとなっています。「世話物」は、江戸期の町中で起こった事件や物語をテーマとして取り上げた内容です。

11月の国立文楽劇場の演目では、「蘆屋道満大内鑑(あしやどうまんおおうちかがみ)」と「鶊山姫捨松(ひばりやまひめすてのまつ)」が「時代物」、「桂川連理柵(かつらがわれんりのしがらみ)」と「女殺油地獄(おんなころしあぶらのじごく)」が「世話物」となっています。

筆者は第二部を鑑賞、どちらも生さぬ仲の親子が登場しますが一方は虐待、もう一方は溺愛と両極端のお話となっています。「女殺油地獄」のラストでは油にまみれながらの修羅場(実際に油は一滴もこぼれていないが、そう見える)が展開され、強烈な印象を残しました。

ストーリーを知っていれば分かりやすい

たとえばハリーポッターを原書で読もうとしたとき、先に翻訳本を読んでいたり映画を観たりしていれば理解しやすいはずです。文楽でも同様に、ストーリーを知っている話ならすんなり分かります。

「義経千本桜」や「仮名手本忠臣蔵」などは映画の題材にも取り上げられているので、なんとなくでもストーリーや登場人物をご存知なら、とっつきやすいと思います。

通しで観ると分かりやすい

文楽の演目には「○○の段」というような、物語の場面ごとのサブタイトルがついています。物語をすべて上演することを「通し」といいますが上演時間が長くなるので、人気のある段だけを抜粋して上演する「見取り」が多くなっています。

見取りだと一番いい所をダイジェストで観られるのですが、前後の流れが分かっていないと話についていけません。時間は掛かりますが「通し」でご覧になると、理解しやすいと思います。

恋愛ものは時代を超える

文楽にはロミオとジュリエット張りの悲恋モノが多くあり、11月公演の「桂川連理柵(かつらがわれんりのしがらみ)」も心中で終わるお話です。

筆者はギオンコーナーで初めて観た「八百屋お七・火の見櫓の段」で、すっかり文楽の魅力にハマってしまいました。やはり恋愛モノ、それも悲恋モノはいつの時代でも感情移入しやすいテーマなのでしょう。

▼文楽と出会うきっかけとなったギオンコーナー

ビジュアルだけでも楽しめる

観て楽しむというシンプルな鑑賞法も、初心者におすすめできます。豪華な衣装やたおやかな人形の所作を楽しみたいなら、傾城やお姫様が登場する演目がおすすめです。来春公演の「壇浦兜軍記(だんのうらかぶとぐんき)」などはいかがでしょう。

また、怪物が登場したり派手な立ち回りがあったりする演目も、観て楽しいものです。筆者がこの夏観た「日本振袖始・大蛇退治の段」も、美しい女型の顔がいきなり鬼の形相に変化したり、大蛇が所狭しと暴れまくったりと、エンタメ性たっぷりでした。

なお、12/2(日)まで企画展示「文楽人形衣装の美」が開催中で、女形の打掛や振袖などの華麗な衣装が展示されています。

▼人形の衣装とは思えない豪華な仕様

おすすめは初心者向け公演

演目ではありませんが、国立文楽劇場では毎年6月に「文楽鑑賞教室」を開催しています。文楽を代表する名作の上演に加え、出演者が実演を交えて文楽の魅力を解説してくれるので、入門編としておすすめです。

また期間中の2日間に、より濃い解説と案内付きの「社会人のための文楽入門」が開催されており、初心者には特におすすめできます。

文楽のチケットでお得な予約方法は?

国立文楽劇場でのチケット予約方法は、初めて劇場に出向いた顛末をレポートした回に詳しくあります。

▼チケットの予約からアクセスまで詳しく解説

公式webサイトでチケットを購入する際に、「NTJメンバー(一般)」「国立文楽劇場 友の会」「国立劇場 あぜくら会」の3つの属性が表示されますが、大阪の国立文楽劇場で鑑賞するなら、「国立文楽劇場友の会」に入会すると大変おトクです。

入会時のみの入会金と毎年自動継続の年会費がそれぞれ1,080円必要となりますが、チケットが2割引になるほか、一般に先駆けてチケットを購入できたり、会員限定のイベントが開催されたりなどメリットがたくさんあります。

今回の11月公演では一般販売の前日に会員向けチケット販売が開始され、狙い通りの座席を取ることができました。料金は、一般だと6,000円のところを4,800円で購入。会費の元はすぐに取れそうです。

文楽は難しくない伝統芸能

文楽は気長に気軽に楽しもう

国立文楽劇場での文楽公演は、年に5回あります。1回の公演でおおむね4つの演目が上演されますが、居住地が劇場から微妙に遠い(宿泊するほどでもない距離)筆者は終日鑑賞するのが難しく、毎回足を運んでも年間で10作観るのが限度でしょうか。

演目数が全部でいくつあるのかは不勉強のため不明ですが、すべてを鑑賞し尽くすにはかなり時間が掛かると思われます。気長に楽しめる文楽は、シニアの趣味としてもおすすめできそう。筆者もコツコツと観ていくつもりです。

今日のボタモチ

今日のボタモチは【ジェンダー】です。

文楽人形の女形の所作は実に美しいもので、観ているだけで女ぶりが上がりそうな気がします。遣っているのは3人の男性なので、これがホントのジェンダーフリー?

※今日はボタモチ、1個追加!

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