京都の穴場・相国寺承天閣美術館で「浮世絵最強列伝」展を観よう

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「サンタフェ リー・ダークスコレクション 浮世絵最強列伝~江戸の名品勢ぞろい~」展が相国寺承天閣美術館(しょうこくじじょうてんかくびじゅつかん)で開催中。

浮世絵の誕生期から幕末までの約200年間にわたる浮世絵の歴史を体系的に鑑賞できるうえ、初刷や稀少品も多数出品されていて、最強列伝の看板にふさわしい内容です。

今回は、「浮世絵最強列伝」の展示や相国寺承天閣美術館の詳細・アクセスなどについてです。

「浮世絵最強列伝」展は最強の浮世絵展

リー・ダークスって誰?

「浮世絵最強列伝~江戸の名品勢ぞろい~」にコレクションを出展している人がリー・ダークス氏です。

リー・ダークス氏は1935年生まれのアメリカ人で、横田基地駐留中に浮世絵を知り、2000年頃から本格的に浮世絵のコレクションを始めたそうです。

現在、初期浮世絵から明治・大正時代まで約250年間の浮世絵を所有されています。

世界に3点しかない作品も展示

葛飾北斎の「風流なくてなゝくせ 遠眼鏡」(後期出展)は、世界に3点しか現存しない超稀少品で、今回の展示の目玉。リー・ダークス氏も「自分のコレクションのなかで最も重要な作品」と語っています。

6枚綴りの大判に3人の力士を描いた三代歌川豊国(歌川国貞)の「小柳常吉、秀の山雷五郎、荒馬吉五郎」(後期出展)や、情感あふれる女性の描写が秀逸な喜多川歌麿の「歌撰恋之部 物思恋」(前期出展)。

さらに北斎の門人・魚屋北渓による色彩豊かな「長生殿」(後期出展)を含めた4点は、今回の展示のなかでも特にリー・ダークス氏お気に入り作品だということです。

名品・優品ぞろいのコレクション

リー・ダークス氏のコレクションは、浮世絵の祖・菱川師宣の作品から歌麿・写楽・北斎・広重ら代表的な浮世絵師の作品を網羅したものです。どれも保存状態がよく、とても江戸時代のものとは思えない鮮やかな色合いを保っています。

浮世絵の多くはチラシや雑誌のような商業出版物だったため、大量に生産・消費されていました。そのため、刷られた時期や摺り師の腕などによって作品の出来に大きな差が生じるうえ、良い状態で保存されることは少なかったようです。

その中で、早期に摺られたものや丁寧に摺られたものの美品ばかりを集めたリー・ダークス氏のコレクションは、価値が高いものといえます。

看板どおり!浮世絵の「列伝」

浮世絵の名品が勢ぞろいした「浮世絵最強列伝」は、まさしく実録・浮世絵史といえる内容です。展示では、浮世絵の誕生から幕末までを6つに分けて紹介しています。

第1章:江戸浮世絵の誕生−初期浮世絵版画

17世紀後半に生まれた墨一色の墨摺絵は、筆で彩色を加えた丹絵や紅絵、墨に膠(にかわ)を混ぜた漆絵へと発展します。18世紀前半には紅や緑などの色版を重ねる版彩色が生まれ、やがて多色摺の錦絵へと発展していくのです。

第2章:錦絵の創生と展開

18世紀後半になると、多色摺の錦絵が誕生します。この時期には美人画や歌舞伎の役者絵が多く描かれ、鈴木春信や勝川春章などが秀作を残しています。

第3章:黄金期の名品

寛政期(1789~1801)は浮世絵の黄金期で、様式や表現が多様化していきます。喜多川歌麿や東洲斎写楽の大首絵、歌川豊国・国政の役者絵も人気が高く、蔦屋重三郎などの版元が出版規制にもめげず、大いに奮闘しました。

第4章:精緻な摺物の流行とその他の諸相

文化・文政期(1804~30)に入ると、マスメディアとしての商品ではなく、個人用に制作される摺物が増えていきます。

精緻な彫や金銀摺・空摺など贅沢で技巧を凝らした作品が制作され、葛飾北斎とその門下の絵師たちが絵師として名を知られるようになりました。

第5章:北斎の錦絵世界

今も絶大な人気を誇る、葛飾北斎の作品が展示されているコーナーです。有名な「冨嶽三十六景」や「諸国瀧廻リ」シリーズのほか、本展示の目玉「風流なくてなゝくせ」も展示されます。

第6章:幕末歌川派の隆盛

天保期(1830〜44)以降は、歌川派が浮世絵界を牽引します。豊国をはじめ美人画・役者絵の国貞、武者絵・戯画の国芳、名所絵の広重らが活躍しました。

木版画は後摺になるほど版が劣化し、作品の質が低下してしまいますが、本展示では摺られた時期の早い作品が多いため、質の高い作品を鑑賞できます。

▼ユニークな「判じ絵」も多い歌川派

オリジナルグッズも充実

ミュージアムショップでは、通常販売されているものに加えて展覧会オリジナルグッズが販売されています。今回展示されている作品をプリントした蓄光Tシャツや、ポップな色調のメガネケースなど、ユニークなグッズがそろっています。

「浮世絵最強列伝~江戸の名品勢ぞろい~」展の詳細

  • 会期
    • 前期:7月3日(火)~ 8月5日(日)
    • 後期:8月8日(水)~ 9月30日(日)
  • 休館日
    • 8月6日(月)・7日(火)※展示替えのため
  • 開館時間
    • 10:00〜17:00(入館は16:30まで)
  • 入館料 ※障害者手帳を提示された方と介護者1名は無料
    • 一般:1,000円
    • 65歳以上・大学生:800円
    • 小中高生:500円

「浮世絵最強列伝~江戸の名品勢ぞろい~」展では前期・後期で作品がすべて入れ替わり、北斎の「風流なくてなゝくせ 遠眼鏡」は後期の出展です。

会期中もう一度鑑賞したい方は、半券か前回入館時にもらったウチワと引換に、100円のリピーター割引を受けられます。

▼裏面の左下に優待割引付き

相国寺承天閣美術館へのアクセス

相国寺承天閣美術館入館案内

  • 住所
    • 京都市上京区今出川通烏丸東入)
  • アクセス ※JR京都駅からなら地下鉄が便利です
    • 京都市バス 59・201・203・102系統「同志社前」下車 徒歩10分
    • 京都市営地下鉄烏丸線「今出川」駅下車 徒歩10分

相国寺承天閣美術館は穴場の美術館

若冲ファンによく知られた美術館

臨済宗相国寺派の大本山・相国寺は塔頭に鹿苑寺(金閣寺)と慈照寺(銀閣寺)を持つ名刹で、これまでにゆかりの人々から数多くの美術品などが寄贈されています。

これらを保管・展示するために造られたのが相国寺承天閣美術館で、相国寺に帰依していた伊藤若冲をはじめ、長谷川等伯や円山応挙など多くの「お宝」が収蔵されている、ファン垂涎の美術館です。

今回の展示会場内にも、若冲の「葡萄小禽図」と「月夜芭蕉図」が展示されていました。

▼館内には金閣寺の模型も

相国寺承天閣美術館は空いている?

展示や報道の関係で違ってはきますが、相国寺承天閣美術館の展示は比較的混雑せず、落ち着いて鑑賞できるようです。筆者が訪れたときも平日の午前だったこともあってか、じっくりと鑑賞できました。

荷物を預けるロッカー(100円・戻ってきます)や休憩用のソファもあり、ゆったりと館内を巡ることができます。

▼お庭を眺めてひと休み

会場は土足禁止

館内は土足禁止です。入館時には入り口で靴を脱ぎますが、カギ付きの下駄箱があるので靴が入れ替わる心配はありません。

会場内の床はカーペット敷きですが、ストッキングや素足だと足が冷えたり疲れたりするかもしれません。厚手のルームソックスを重ね履きすると快適です。

館内にカフェやレストランはなし

美術館内にもお寺の境内にも、カフェやレストランはありません。

近隣に飲食店はありますが、日替わりランチが550円でいただける同志社大学の学食「アマーク ド パラディ 寒梅館(室町キャンパス内)」はいかがでしょう。

学食とはとても思えない、オシャレな店内とメニューに驚きますよ。不定休なので、事前に確認してからどうぞ。

相国寺承天閣美術館で浮世絵を満喫しよう

ゆったり過ごせる京都の穴場

京都はデフォルトで混んでいます。そんななか、相国寺承天閣美術館は比較的ゆったりと過ごせる穴場的なスポットです。

「浮世絵最強列伝」展のポスターにもなっている「二代目中村仲蔵の松王丸」や、「風流なくてなゝくせ 遠眼鏡」などが出展される後期は、前期より混雑するかもしれません。

それでもよその観光スポットに比べると静かだと思われます。暑い夏、涼しい美術館でゆるりと目の保養をされてみてはいかがでしょうか?

今日のボタモチ

今日のボタモチは【タフ】です。

浮世絵は通常の美術品とは異なり、「売れるモノ」と「検閲をパスできるモノ」との兼ね合いで制作された商業出版物でした。そんな縛りをかいくぐり、タフにいい仕事を続けた人たちに脱帽です。

※今日はボタモチ、1個追加!

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