プロ棋士の頭の中とは?神吉宏充七段講演会に参加して

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史上最年少プロ棋士の藤井聡太四段の大活躍もあってか、このところ将棋がかつてないほどの脚光を浴びていますね。ところで、短時間に何十手も先を読むプロ棋士の頭の中はどうなっているのか、興味はありませんか?

今回は、兵庫大学で開催された講演会での神吉七段のお話「勝負師、先の読み方考え方―― 一歩先を見る思考の重要性」から、プロ棋士の頭の中に迫ってみたいと思います。

神吉宏充七段はこんな人

神吉七段は、ボリューミーなボディーにスカイブルーのスーツというインパクトのある出で立ちで登場。「今日はこんな地味な服装で…」と講演が始まりました。

将棋界一のエンターテイナー

兵庫県加古川市出身で現在59歳の神吉七段は、19歳で内藤国男九段に弟子入り後24歳でプロ棋士四段となり、2011年に七段で引退しました。

楽しくて面白いトークでバラエティー番組にも多数出演し、「将棋界一のエンターテイナー」の異名を取っています。現在はイベントなどで将棋普及に尽くしておられ、今回の講演会もその一環なのです。

出身地は加古川市

神吉七段は加古川市出身です。正直なところ、加古川市は近隣の明石市や姫路市に比べると知名度では劣っています。

しかし、神吉七段をはじめ久保利明王将・井上慶太九段・稲葉陽八段・船江恒平六段の5名を擁する「棋士のまち」なのです。プロ棋士になれる確率は約80万分の1といわれるなか、人口26万人の加古川市に5名のプロ棋士がいるということは、かなりスゴイことではないでしょうか。

引退したのにプロ?

神吉七段は現役を引退されていますが、現在もプロ棋士なのです。プロ棋士の仕事は、公式戦以外にも指導対局やアマチュア大会の審判のほか、執筆やイベント出演など、多岐にわたっています。

昨年現役を引退したひふみんこと加藤一二三九段も元プロ棋士ではなく、プロ棋士なのです。神吉七段の場合もひふみんと同様、現在も将棋連盟に所属して将棋の普及活動を続けていので、元プロではありません。

なぜ引退したの?

プロ棋士になるのは並大抵ではありませんが、プロになってからも厳しい世界なのです。

順位戦での成績がよくなければ「フリークラス」に陥落してしまい、そのまま10年以内に規定の成績に達することができなければ、そのまま強制的に引退させられます。神吉七段はこの規定にしたがって引退されました。

フリークラスから順位戦に復帰するには他の棋戦で勝てばOKなのですが、順位戦で勝てないのに竜王戦などで勝てる可能性は低く、フリークラスから復帰できる可能性は限りなくゼロに近いようです。

プロ棋士の頭の中を読み解く

神吉七段の講演「勝負師、先の読み方考え方―― 一歩先を見る思考の重要性」の中から、プロ棋士の思考を探るうえでヒントになったものをピックアップしましょう。

将棋で頭がよくなる?

将棋をすると頭がよくなるのか頭がいいから将棋が強いのか?いずれにしても、将棋が高度な頭脳プレイであることに間違いはありません。

古代インド発祥の「チャトランガ」というゲームが各地に流れて「チェス」「シャンチー(中国将棋)」「将棋」などに変遷しましたが、相手から取った駒を自駒にできるのは日本の将棋独特のルールです。

このルールによって将棋の指し手の組み合わせは天文学的な数になり、チェスの「10の120乗」に対して将棋は 「10の220乗」。10の100乗をグーゴルといって「グーグル」の社名はここからきているようですが、それをはるかに超える将棋の指し手から、プロ棋士は最善の一手を直感で見つけるのだそうです。

プロが読むのは200手以上先

プロ棋士の多くは対戦中200手先まで読んでいるのだそうです。もちろん紙に書いたりせずに頭のなかで行うのですが、集中力の持続があってこそできることでしょう。

プロ棋士の多くは将棋を始めてから一つのことを集中して考えられるようになったと答えているとのこと。もちろん素質が大きな要因だと思いますが、集中力アップのトレーニングとして将棋が適しているといえそうですね。

★将棋は脳トレにぴったり!

プロ棋士のメンタルがずごい

お話は棋士のタフなメンタルにも及びました。プロ棋士の的確な一手は頭脳だけではなく、ブレないメンタルに支えられているようです。

コップ半分の水をプロ棋士はどう見る?

コップ半分の水をどう見るかという有名なメンタル系の話がありますが、プロ棋士は「もう」とも「まだ」とも見ないのだそうです。

ではどう見るのかというと「今の状態」だけを見て、ここからスタートするのだとか。確かに「もう」も「まだ」も過去や未来をチラ見している状態ですね。

羽生さんの年齢を感じさせない強さの秘密もここにあって、「昔を取り戻す」とか「前のほうがよかった」などとは考えず、その局面での最善手を考えているのだとか。勝負に負けたときにそのまま引きずってしまうか、気持ちを切り替えられるか、負けを次に活かせられるかの分かれ道もここにありそうです。

★メンタルを統御するものとは?

「負けました」が育むもの

将棋では勝負がついた時、負けた側が「負けました」と宣言します。「負けました」に一切の言い訳は付けず、潔く負けを受け止めるという習慣を身につけることで、強くなれるのだそうです。

そもそも自分のミスを受け入れられない人が、他人から自分のミスや弱点を指摘されても素直に聞けるわけはなく、反対にむくれたり凹んだりするのはよくあること。しかし、そんなことでは将棋そのものも強くなれないのです。

師匠の寓話に込められた将棋の奥義

神吉七段が4連敗した時に師匠が話してくれたという「象と鮫とロバと牛」の寓話がとても印象的でした。

『鎖に繋がれた象と透明な板で仕切られたプールの中の鮫は、どちらも自分はもう逃げられないと諦めてしまっている。ロバは優柔不断で迷っているうちに死んでしまった。ある教授が乳牛のお乳を触ると時間が分かるという研究を続けていたところ、実は乳牛の大きなお乳が邪魔で向こう側の時計が見えなかったのでどかしていたのを、お乳を触ると時間が分かると思い込んでしまっていた。』

という内容でしたが、この4つのお話から、将棋の奥義として

  • 思い込まないこと
  • 挑戦し続けること
  • 悩みすぎないこと
  • 直感を信じること

を教わりスランプを脱することができたのだそうです。つまり粘り強さと見切りに集約されます。しかし、筆者の場合は粘るべきところで見切り、見切るべきところで粘ってしまう傾向があるように思えるのですが…

勝負師は結果が全て

強さを支えるブレないメンタル

勝負師の強さは技術面での優位以上に、ブレないメンタルによって支えられているのでは?

厳しい世界に身を置き精進を重ねながら、さらなる高みを目指す勝負師の姿には美しさが感じられますが、その美しさを裏付けるものが少しだけ見えたように思えた神吉七段の講演でした。

今日のボタモチ

今日のボタモチは【好奇心】です。

もともとの素質をどこまで開花させられるかは、向上心というより「もっと道を極めて未知なる自分に出会いたい」という飽くなき好奇心にかかっているのかもしれません。

※今日はボタモチ、1個追加!

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