初春公演の千穐楽以降、コロナで休演が続いていた大阪の文楽が9ヵ月ぶりに帰ってきました。
筆者は11月1日の第三部『本朝廿四孝』を観に行きましたが、乙女心のいじらしさと一途さに参ってしまい、圧巻のラストは迫力満点でした
今回は、大感激の文楽鑑賞レポートです。
文楽劇場でのコロナ対策は?
文楽劇場の安全対策はバッチリ
たくさんの人が集まる劇場に行く際には、コロナ感染への対策が気になるものですが、国立文楽劇場では万全の対策で、感染防止に努めています。
座席予約の段階で客席はスカスカとなっていて、とくに床の前は完全に空席とされていました。
▼安心して鑑賞できたけどちょっと寂しい
安全対策に観客も協力したい
毎回演目にちなんだスタンプが用意されているのですが、今回は無し。不特定多数の人の手が触れることに配慮してのことでした。
ロビーや客席での食事も禁止で、1階の特大かしら(マスク着用)後方と、文楽茶寮だったところに用意された無料休憩所を利用します。
普段とは違っていろいろと制約がありますが、理解と協力をしたいところです。
『本朝廿四孝』で恋する乙女のパワーを実感
『本朝廿四孝』は筋書きがけっこう複雑
錦秋文楽公演『本朝廿四孝(ほんちょうにじゅうしこう)』は、「甲陽軍鑑(こうようぐんかん)」に諏訪湖の霊狐伝説や中国の二十四孝故事などを絡めた複雑な筋書きです。
ザルっといえば、許嫁の武田勝頼が切腹して悲嘆にくれる長尾(上杉)家の八重垣姫が、実は勝頼は簑作という名前で生きていて、勝頼を助けたい一心の姫が武田家の重宝・諏訪法性(すわほっしょう)の兜の霊力を頂いたことで願いが叶うというお話です。
プログラムは事前に見ておきたい
長いお話の一部を上演する文楽では、上演される段だけを観ても意味がイマイチ分かりづらいことがあります。
『本朝廿四孝』では、切腹したはずの勝頼がなぜ簑作となって生きていたのかを知っていないと、話がつながらないかもしれません。
でも、話の要所が手短にまとめられている「床本付プログラム(700円・税込)」を開演前に購入して、鑑賞ガイドに軽く目を通しておけば大丈夫です。
▼プログラムには技芸員の方々の紹介やインタビュー記事も
圧巻のラストに割れんばかりの拍手喝采
しとやかな姫の情熱的なクドキにドキドキ
話の筋は少しばかり複雑ですが、赤い衣装を身に付けた美しい八重垣姫の所作はとてもしとやかで、うっとりと見入ってしまいます。
「十種香の段」では勝頼の絵姿を眺める後ろ姿から、姫の勝頼を思ういじらしい気持ちがひしひしと伝わってくるのです。
そんなしとやかな姫ですが、簑作(実は勝頼)に胸の内を切々と訴える「クドキ」の場面ではすごく情熱的で、ドキドキさせられます。
ラストの迫力あるビジュアルは圧巻
最後の「奥庭狐火の段」での八重垣姫は、赤い衣装から白地に狐火模様の衣装に早変わり。神懸かった姫と白狐とが、妖気漂う乱舞を繰り広げるのです。
圧巻のラストには客席から割れんばかりの拍手が鳴り響きましたが、これまで筆者が観た公演で最も盛大な拍手だったように思います。
令和2年度(第75回)錦秋文楽公演の詳細
公演日
- 10月31日(土)~11月23日(月・祝)※11月12日(木)は休演
第一部 午前10時30分開演
源平布引滝(げんぺいぬのびきのたき)
- 矢橋の段
- 竹生島遊覧の段
- 九郎助住家の段
第二部 午後2時開演
新版歌祭文(しんぱんうたざいもん)
- 野崎村の段
釣女(つりおんな)
第三部 午後6時開演
本朝廿四孝(ほんちょうにじゅうしこう)
- 道行似合の女夫丸
- 景勝上使の段
- 鉄砲渡しの段
- 十種香の段
- 奥庭狐火の段
大満足だった9ヵ月ぶりの公演
やっぱり文楽は女役が好き
今年の大阪での文楽公演は、お正月公演以降ずっと休演が続いていましたが、9ヵ月ぶりの復活となった錦秋文楽公演は大変すばらしいものでした。
筆者が文楽公演に通うきっかけとなったのは「お七」でしたが、やはり文楽は女役がいい。
女役の人形は生身の女性よりたおやかさと気品に満ち満ちていて、絶滅したかもしれない大和撫子の姿を見ることができるからかもしれません。
今日のボタモチ
今日のボタモチは【乙女】です。
宝塚の男役のような男性が実在しないのと同様、文楽の女役のような乙女も空想の産物で、物語のなかで会うしかないのかも…。
※今日はボタモチ、2個追加!
コメント