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『仮名手本忠臣蔵』全段上演でわかった「蔵」の意味と人生の大事

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国立文楽劇場の35周年記念として、3公演連続で全段完全上演が行われた『仮名手本忠臣蔵』の最後を飾る8段目から11段目が公演されました。播州人である筆者は忠臣蔵をそれなりに知っているつもりでしたが、文楽では主役も違っていたみたい。

今回は、よかれと思っての行いが裏目に出てしまう人生のままならなさに涙した、『仮名手本忠臣蔵』の鑑賞レポートです。

『仮名手本忠臣蔵』の主人公とは

忠臣蔵の「蔵」は内蔵助のこと?

『仮名手本忠臣蔵』の主役は、大星由良助であるという意見が一般的でしょう。

赤穂の義士祭でも本物の俳優(今年は高橋英樹さん)が、由良助のモデルである大石内蔵助として特別出演します。忠臣蔵の「蔵」は大石内蔵助のことであるという意見も多いようです。

けれども『仮名手本忠臣蔵』のテーマを体現しているという意味での主人公は、別の人物のようでした。

本蔵がいなければ『仮名手本忠臣蔵』はなかった

国立文楽劇場の階段を上がったところには、上演される演目の名場面が掲げられているのですが、今回そこには由良助ではなく加古川本蔵の姿がありました。

『仮名手本忠臣蔵』のお話の始まりは松の廊下事件ですが、そもそも塩冶判官が刃傷沙汰を起こすことになったのは、本蔵の家臣としての忠義によるものです。

さらに赤穂浪士が仇討ちで晴らさなければならなくなった主君の無念は、本蔵が高師直に切り掛かった塩冶判官を羽交い絞めにして押しとどめたことが原因です。

つまり本蔵がいなければ、『仮名手本忠臣蔵』という物語は始まらなかったということになります。

本当の忠臣は本蔵

『仮名手本忠臣蔵』という題名のなかに、本蔵の名前が「忠臣」をはさむようにあります。

さらに文楽では9段目が物語の中心であることから、この段の主役である本蔵こそが『仮名手本忠臣蔵』の主人公であるという見方もできるようです。

本蔵は桃井家の家老として、主君が取り返しのつかないことをしでかす前に手を打ったのだから、最高の忠臣でしょう。

一方、由良助は主君の仇を打った天晴な忠臣とされていますが、主君の一大事を回避できなかったわけで、仇討ちがベストな手とはいえません。

したがってどちらが有能な忠臣かといえば、本蔵に軍配が上がるはずです。

人生のままならなさを実感する『仮名手本忠臣蔵』

良かれと思っての行いが裏目に

本蔵が塩冶判官の邪魔をしたのは、塩冶判官の助命が目的でした。

高師直に怪我をさせただけなら、塩冶判官は切腹せずにすむはずだと考えてのことだったのですが、思惑は外れてしまったのです。

本蔵にとって塩冶判官はよその殿様なので、本来なら見て見ぬふりをしていればよかったのでした。

他人事ではなかった松の廊下事件

ところが本蔵にとって塩冶判官は、愛娘・小浪の許婚である大星力弥の主君でもあったのです。

塩冶判官が切腹となれば娘の婿が路頭に迷うことになる、それだけはなんとしても避けたい・・・

という本蔵の父としての思いが、他家の殿様を羽交い絞めにするという大胆な行動を取らせたのでした。

愛娘の幸せのために命を捨てた本蔵

そんな本蔵の努力も空しく、塩冶判官は本蔵に恨みを残して切腹。大星親子は浪人となってしまいます。

さらに亡君の仇ともいえる本蔵の娘・小波と力弥との祝言は流れそうになるのです。

力弥と結婚できないなら死ぬという小浪の思いを叶えるために、本蔵はわざと力弥の手に掛かって死ぬことを選び、引き出物として高師直邸の図面を由良助に渡します。

本蔵は真面目で有能な家老であり、愛娘の幸せを願うよき父親でもありました。

どこから見ても本蔵はいい人ですが、そんないい人の良かれと思っての行為が引き起こしてしまった悲劇が『仮名手本忠臣蔵』なのです。

ままならない人生も報われたら本望

自らの行為が裏目に出てしまった本蔵でしたが、命を賭けた娘の思いを叶えることができたうえ、由良助の理解を得られたことを確認して命を終えることができました。

ここでもうひとり、本蔵以上にままならない人生だった勘平も、忘れることができない人物です。

勘平は、念願だった討ち入りに参加できないまま切腹してしまいます。

けれども、討ち入りのあと亡君の墓前で由良助は、勘平の義兄・寺岡平右衛門に勘平の遺品を手渡し二番目に焼香させることによって、勘平を討ち入りに加えたのです。

報われる人生がどのようなものであるかについては、人それぞれに見解があると思います。

けれども思いを叶えることができ、わかってほしい人に自分の真心を理解してもらえたなら本望で、心置きなく成仏できるのではないでしょうか。

無事終了した『仮名手本忠臣蔵』全編上演

めったに見られない2・10段目も上演

昔は丸1日掛けて上演されていた文楽ですが、長時間の鑑賞はかなり大変です。

そのためか、本筋に関係が薄い段は端折られることが多くなり、上演される機会が少なくなっています。

今回の『仮名手本忠臣蔵』全編上演ではそんなレアな段も鑑賞することができたため、話の流れがよく理解できたように思います。

3公演連続で鑑賞すると手拭いがプレゼントされるラリーや、大石神社の絵馬奉納などのイベントもあり、国立文楽劇場35周年の記念企画は無事終了となりました。

ところで、文楽を見ると日本酒が恋しくなります。そこで、大阪メトロ本町駅16番出口すぐの「浅野焼鳥日本酒」へ出動、カウンター10席のこじんまりしたお店です。

今回は、風の森300周年記念の限定酒2種と真野鶴の超辛口純米無濾過生原酒(日本酒度+20!)をいただき、いい気分で帰路に就いたのでした。

▼右の「笊籬採り」が特に美味

今日のボタモチ

今日のボタモチは【川下り】です。

人生は山登りというより、むしろ川下りのようなものなのでは?そして、文句をいいながら流されていくのではなく、自ら進んで流れていったほうがよい結果になるように思うのです。

※今日はボタモチ、1個追加!

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若杉ひふみ
兵庫県生まれの兵庫県育ち
アラ50のO型
現在、昼間は介護予防事業、アフター5はエイジレスライフ実現への考察と実験に勤しむ日々です。
介護予防につながるエイジレスライフの奥義は、好奇心を失わないこと。その実践として「興味本位」な毎日を過ごしています。おいしそうなボタモチはとにかく食べてみよう!ということで、新たな世界との出会いに加え、足腰が強くなるというおまけも付いてきました。
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