世間を見渡してみると、介護を受け持つのは嫁というケースが多いようです。ところが義父母が亡くなっても、嫁には遺産を相続する権利はありません。義父母の実子である夫や子供には相続権があるため、夫もしくは子供や孫がいればまだいいのですが、嫁ひとりだけであれば一文たりとも相続することはできないのです。
こんな理不尽を解消するために約40年ぶりに改正された相続法ですが、本当に嫁は報われるのでしょうか?今回は、相続税セミナーで学んだ寄与分についてシェアします。
相続法改正で嫁の介護貢献が評価されるように
これまで嫁の介護貢献は黙殺されていた!
実際に介護を行っている人の多くは「嫁」です。さらに介護は嫁がして当たり前という意識がまだまだあるため、苦労が報われることはあまりありません。それどころか「丸投げ」された挙げ句、「もっとちゃんとしてあげて」などと注意されることさえあるのです。
やっと介護が終わると遺産分割が行われますが、このとき嫁に相続権はなく、住んでいた家が遺産分割の対象になっているケースでは、家を追い出されることにもなりかねません。
このように嫁の介護貢献は、心情的にも金銭的にも認められないことが普通なのです。夫もしくは子供がいれば相続権を行使できますが嫁一人なら打つ手はなく、帰る実家がなければ下流老人まっしぐらとなるかもしれません。
▼報われない介護などしたくないなら
相続法改正で嫁にも遺産相続権が与えられる?
さすがにそれでは理不尽だろうということで相続法が改正され、介護を担った嫁の貢献度が認められるようになりました。
とはいえ、嫁に遺産の相続権が与えられたわけではありません。与えられたのは「請求権」で、相続人以外の親族(嫁など)が被相続人の介護を行った場合に、相続人に対して金銭の支払を請求することができるようになったのです。
これまで嫁が全く蚊帳の外におかれていた状態に比べると進歩したように思えますが、実際に嫁が相続人たちに対して、「私にもお金をちょうだい」と請求できるのでしょうか?
介護貢献度の評価はかなり「辛い」
介護貢献はなかなか認められない
これまでも遺産分割のとき相続人に対しては、被相続人に対する介護などの貢献を「寄与分」として金銭換算して上乗せすることが認められていました。
とはいえ寄与分がいくらになるかについては、相続人どうしの話し合い(遺産分割協議)で決められるのです。このときに「世話になったのだから」と、寄与分がすんなり認められることは滅多にありません。
寄与分を認めれば、それだけ自分たちの取り分が減ってしまうわけで、遺産分割協議で合意に至らなければ、家庭裁判所に調停を申し立てて解決を図ります。こうなるともう「争族」ですね。
寄与分は民法で定められているけれど
寄与分が認められるのは、特定の相続人が被相続人の財産の維持または増加に特別な貢献をしたときです。
老親を介護するケースで寄与分が認められるパターンは、被相続人を介護した「療養看護型」と被相続人の生活を援助した「扶養型」の2つで、両方またはいずれかをほぼ無償で行った場合となります。
これらに加え「被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与」をしていなければ、寄与分として認められません。夫婦や親子、兄弟姉妹には相互に扶養・扶助する義務があるため、被相続人の財産を減らさないほどの貢献でなければ、「ご褒美」に値しないということになるのです。
寄与分の請求は絵に描いた餅?
嫁の保身は「先手必勝」
ここまでで分かるように、相当の貢献でなければ法的に寄与分の対象として認められません。さらに血縁である相続人同士であってでも寄与分はなかなか認められず、調停にまでもつれ込むこともあるのです。
こんなにハードルの高い寄与分の請求を、実際に嫁が主張できるでしょうか?相続税改正で認められた「相続人以外の親族による寄与分の請求」は、絵に描いた餅に終わるかもしれません。
介護に関しては、相続法より介護保険法のほうがはるかに頼りになります。介護保険を利用して、極力プロに任せましょう。さらに、介護保険を利用すれば掛かった費用は明確となり、負担した金額が寄与分として法的に認められる可能性も高くなります。嫁の保身は先手必勝、きっちり数値化できる方法を探してください。
今日のボタモチ
今日のボタモチは【見積もり】です。
タダより高いものはないといいますが、30万円相当に換算されるといわれる主婦業が当たり前のことで片付けられてきたように、タダで手に入るものは安く見積もられてしまうのです。実に残念。
※今日はボタモチ、半分追加…。
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