西宮の大谷記念美術館で開催中の「追悼特別展 高倉健」を見に行きました。実は筆者、中学時代からの健さんファンなのです。
遺作となった「あなたへ」以来6年ぶりに再開した健さん。今回は、追悼特別展 高倉健の見どころを(独断と偏見満載で)ご紹介しましょう。
追悼特別展 高倉健の展示内容
★撮影OKコーナーのパネルから
健さん出演の全205作品が見られる?
高倉健の三回忌を機に映画俳優としての仕事を回顧する「追悼特別展 高倉健」が西宮で開催されていることを知って、速攻で1日を確保した筆者。
出典:毎日ニュース
健さんのデビュー作から遺作まで全205作品を見ることができることに加え、映画の展示がどのようなカタチになるのかということにも興味津々で、ワクワクしながら当日を迎えました。
全部見ると2時間は掛かる
展示されている映像は、各作品から選んだ数分以下の抜粋版ですが、205作品全てを見るには2時間は必要と案内されていました。
実際に筆者が見るのに掛かった時間は2時間半。休憩とミュージアムショップでのお買い物を含めると3時間で、鑑賞にお出かけの方は、時間に余裕を見ていただければと思います。
館内には喫茶店があって、美しいお庭を眺めながら一息入れられます。
「追悼特別展 高倉健」関西ではココだけ
「追悼特別展 高倉健」は、健さんの三回忌に合わせて2016年にスタートした巡回展です。東京をはじめ健さんの出身地・北九州や北海道などを巡回してきました。
関西では今回の西宮のみでの開催なので、関西在住の健さんファンはどうぞお見逃しなく。
- 会期:4月7日(土)~5月27日(日)・水曜休館(5月2日は開館)
- 開館時間:10:00~17:00(入場は16:30まで)
- 入館料:一般1,000円・高大生600円・小中生400円
- アクセス:阪神電鉄「香櫨園」駅から徒歩6分
映画館とのコラボレーション企画もあり
会場では抜粋の映像を観られますがそれでは物足りないという方向けに、健さんの映画を映画館で丸々見る企画をご紹介しましょう。
《新世界東映(二本立て!)》TEL:06-6641-8568
- 4月27日(金)〜5月3日(木):「昭和残侠伝 吼えろ唐獅子」「狼と豚と人間」
- 5月4日(金)〜10日(木):「網走番外地」「暗黒街最大の決斗」
- 5月11日(金)〜17日(木):「人生劇場 飛車角と吉良常」「花と嵐とギャング」
《Cinema KOBE(二本立て!)》TEL:078-531-6607
- 5月12日(土)〜18日(金):「新幹線大爆発」「昭和残俠伝 唐獅子牡丹」
《元町映画館》TEL:078-366-2636
- 5月19日(土)〜25日(金):「飢餓海峡」
- 5月26日(土)〜6月1日(金):「君よ憤怒の河を渉れ」
上記の映画館で美術館のチケットを呈示すれば、一般当日料金から対象作品に限り200円引きになります。また、上記の映画チケットを呈示すれば、美術館の一般当日料金から200円の割り引きを受けられます。
さらに、美術館と映画館2館の3ヶ所を巡ってスタンプを集めると、展覧会告知ポスターがもらえる(先着100名)スタンプラリー企画もあります。
健さんの仕事を映像でたどる
では、実際に展示会場をめぐってのレポートをご紹介しましょう。
オープニングで健さんを「浴びる」
最初の展示会場では、横尾忠則氏による映像作品が展示されていました。
部屋の足元と背面を除く4面に映し出される『網走番外地』『昭和残侠伝』など6作品の予告編からなるもので、最初に部屋に入ったときにはどこを見ればよいのか戸惑いました。
しばらくして目が慣れてくると、健さんが前・上・左右から降り掛かってくるようなド迫力で、まさに健さんを「浴びる」感覚です。
展示物は「映像」がメイン
展示は健さんがデビューを飾った『電光空手打ち』(1956年東映)から年代を区切って展示されていました。展示映像は数分以下にカットされた場面を数作品ずつ繋いだもので、モニターやプロジェクターを使って常時映し出すというスタイルです。
お客さんの年代は70代前後の方が一番多かったようで、男性ばかりでなく女性グループも結構おられました。仕事で日々お元気な高齢者の方々に接している筆者は一瞬、職場にいるような錯覚を覚えたものです。
会場には椅子が置かれているので、座ってじっくりと見ることもできます。
健さん所蔵のお宝も
映像とともに、健さんが所蔵していた台本や小道具をはじめ、スチール写真、ポスターやプレスシートなどの貴重な資料も展示されていました。実は健さん、物持ちがいいタチなのですね。
なんと昭和31年に発行された入社直後の身分証明書(顔が若い!)も展示されていて、ここから健さんの映画人生が始まったのかと感慨深いものがありました。
初期の映像は若さがいっぱい
デビューから1963年までの展示を見て感じたことのひとつは「若い!」ということ。筆者的には健さんといえば渋いオトナのイメージですが、展示の中の健さんはやんちゃな快男児と言った雰囲気で、結構コミカルな味も出しています。
当然ですが、共演の美空ひばりや萬屋錦之介、丹波哲郎らも若い!映像の中にはもう故人となった方たちがたくさんおられ、昭和はすっかり昔の話になってしまったなぁ…と、しみじみ思いました。
もうひとつ感じたことは、健さんをはじめ当時の映画業界は「超・オーバーワーク」だったということ。
1958年に映画観客人口が11億人を超えピークに達したそうで、健さんは年間10本以上の作品に出演、いったいどうやって撮影したんだろう…シリーズ物も多くまさに映画全盛期に健さんはデビューしたのでした。
着流し姿が似合う健さん
1964年から69年までの東映時代中期は任侠映画の全盛期で、映画館から出てきた観客の多くは、歩き方まで変わってしまうほどだったといわれるほどの人気を博しました。筆者も高倉健=義理と人情のイメージが強く、着流し姿が日本一似合うのは健さんだと思っているひとりです。
時代劇もそうですが、この頃の任侠映画では善玉と悪玉が視覚的にもはっきりと分かりやすく、見ていてスッキリするカタルシス効果の高いものだったように思います。
なぜか雪のシーンが多く、雪が似合う健さんのイメージはここから始まったのでしょうか?
任侠映画衰退のなかで
1970~75年の東映時代後期は、任侠映画が衰退して実録ヤクザ系に変化していったようです。この6年間の作品数は34本、同じく6年間の中期では59本となっていて4割減となっていたり、シリーズモノが終了して単発モノが増えていたりと寂しい状況になっています。
もちろん実録ヤクザ作品でも健さんは暴れていますが、間もなく東映を去ることになるのです。
「追悼特別展 高倉健」はじっくり見たい
古風な男はこのあとどうなるのか
展示はこのあと独立後から遺作までまだまだ続きます。健さんが東映を去る頃、時代は豊かになり戦後生まれが半数を超えました。
世の中の風潮や価値観が大きく変化していくなかで、古風な男・健さんはどうなっていくのか…。一息入れた後、再び鑑賞に戻ります。
今日のボタモチ
今日のボタモチは「筋」です。
筋を通すのは結構大変で、仕方なく曲げて調整したりするのですが不器用な人にはこれがなかなか難しい。うまく曲げられず折れてしまったりしながら噛みしめていた悲哀を、健さんの映画でなだめていたのかもしれません。あるいは上手に曲げられる人も…。
※今日はボタモチ、1個追加!
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