遺産相続が「争族」化して骨肉の争いに…サスペンスドラマでよく取り上げられるテーマです。特に法定相続人以外の人に遺産を相続させたい場合、遺言書が最強のアイテムとなります。
けれども有効な遺言書を作るためには面倒な方式や手続きがあるため、あまり普及していませんでした。今回は、約40年ぶりに改正された相続法の自筆遺言書の方式についてレポートします。
争族解決には遺言書が最強のアイテム
相続できる人は法律で決められている
遺産を相続できる人は、法律で厳密に定められています。配偶者が存命であれば無条件で相続でき、続く相続順位は子、子がいない場合は直系尊属(親)、子も直系親族もいない場合は兄弟姉妹となっています。相続できる割合は以下のとおりです。
- 配偶者:子=1:1
- 配偶者:直系親族=2:1
- 配偶者:兄弟姉妹=3:1
配偶者と子供ふたりで2,000万円を相続する場合なら、配偶者が1,000万円、子供がそれぞれ500万円ずつとなります。
なお、子供に関しては、嫡出子・非嫡出子・養子のいずれも相続順位は同列で相続額も同一です。また、胎児に関しても死産以外であれば同じ相続権が与えられます。このあたりはサスペンスドラマネタ満載ですね。
法定相続人以外の人に遺産を遺したいなら遺言書
相続において最も優遇されているのは配偶者(多くの場合で妻)です。この場合の配偶者とは「書類上」つまり法律上の婚姻関係にある人のことで、内縁関係にある人には相続権はありません。
たとえ奥さんとの関係が悪化して別居状態にあり、実質的には内縁の妻が献身的に尽くしてくれてきたとしてもです。けれども遺言書があれば、内縁の妻に遺産を遺すことができるのです。
遺言書で全財産を内縁の妻に遺すことはできる?
遺言書は、法定相続人以外の人に遺産を遺したい場合の最強アイテムですが、全財産を内縁の妻に遺すことはできません。法定相続人には「遺留分」を請求する権利があるためです。
たとえば、「内縁の妻A子に全財産1億円を相続させる」と書いていたとしても、奥さんと子供には遺留分として1/2の取り分が認められているため、A子さんには5,000万円しか遺せません。
奥さんと子供にすれば、遺言書がなければ1億円を相続できるので、このあたりもサスペンスドラマに登場しそうなネタですね。
改正相続法で自筆証書遺言が簡単に作れるように
遺言書の作成は結構難しい
相続において最強の遺言書ですが、あまり作成されていません。それは遺言書の作成にはめんどうな取り決めがたくさんあるためです。現在の相続法で有効と認められている遺言書は以下の3種類となっています。
公正証書遺言が安全確実
検認とは、家庭裁判所で行う遺言書の偽造防止や保全のための手続きです。先の表でみたように、3つの遺言のなかでは公正証書遺言が最も安全・確実なものですが、手続きが面倒です。証人は相続人以外の人でなければならず、費用も発生します。
費用は相続額と相続人数が多いほど高くなりますが、内縁の妻ひとりに1億円相続させたい場合なら43,000円程度で、さほどの金額にはなりません。
証人は公証役場で手配してもらうこともでき、費用は証人1人につき1万円程度です。多額の遺産がある方なら、素直に公正証書遺言を作成されることをおすすめします。
改正相続法で自筆証書遺言が手軽に作れるように
先に上げた3つのなかで、自筆証書遺言がもっとも手軽に作れるものです。けれども遺産の目録を含めた全文を自筆で書くことは、結構大変です。また、内容に不備があると無効になることや、悪意のある誰かに発見されて改ざんされたり隠されたりすることもあります。
改正相続法では自筆証書遺言の方式が緩和され、遺言書に添付する相続財産目録については、ワープロやパソコンでの作成や通帳のコピーが認められました。また、自筆証書遺言を法務局で保管できる制度も作られることになったのです。
これらの改正により、自筆証書遺言の敷居はかなり低くなり、安全性が高まるのではないでしょうか。なお施行スケジュールは、自筆証書遺言の方式緩和が2019年1月13日、自筆証書遺言の保管制度が2020年7月10日となっています。
改正相続法で争族から円満な相続へシフト
円満な相続で終活に有終の美を
現行の相続法が昭和55年から変わっていないとは、驚きでした。改正相続法では自筆証書遺言以外の分野でも、社会の実情に合った方策が盛り込まれています。終活の目的が遺された人たちの幸福であるなら、争族を防止するための方策は最重要課題だと思うのです。
今日のボタモチ
今日のボタモチは【主張】です。
法は権利の上に眠る人を保護しないそうですが、権利のない人も保護しません。権利のない人を保護したいなら確実な方法で主張する必要があり、遺言書はその方法のひとつです。
※今日のボタモチ、1個追加!
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